TOP INTERVIEW 2024

『釣具新聞2024新年号』より ※記事のご提供:名光通信社様

 2024
年の元旦にあたり、社員の皆様とともに初売りを迎え、たくさんのお客様にご来店頂き、例年と変わらぬ新しい年の幕開けを迎えられたことに幸せを感じていました。
それが一転したのは当日の夕刻、能登半島地震が発生し、甚大な被害をもたらしました。
まずはこのたびの地震により被災された方々に対し、心よりお見舞い申し上げますとともに、被災地域の一日も早い復旧・復興をお祈り申し上げます。
弊社におきましても、災害への備えをより強固にするとともに、常日頃からの防災意識を高めていかなければと感じております。

 

【昨年を振り返り

 現在、釣具小売店を取り巻く経営環境は、利益が非常に確保しづらくなっています。昨年は市場が供給過多となり、需給のバランスが崩れた事で販売価格の下落が加速しました。それに加え各店のポイント付与競争も激しくなっており、商品を販売しても、利益を確保する事が以前と比べて難しくなっています。
また、電気代や水道光熱費、運賃などの諸経費がいずれも上昇しています。さらに賃金の上昇は止まりませんし、今後も下がる事はないと推測されます。最低賃金を見ても、この10年間で30 %ほど上昇しています。ただ、この賃金上昇に対応していかなければ、人員の確保が難しくなり、運営が立ちいかなくなってきます。利益は減少し、コストは上がる一方の状況に対応するため、経費全般やプライシングの見直しをせざるを得ない1年でした。
 こういった中で、プロダクト・ライフサイクルについても考える年となりました。昨年もヒット商品はありましたが、ヒットした後にどうなっているのかが重要なのです。初回導入時だけ売れたのか。2回目、3回目に仕入れた後はどうなったのか。それぞれの商品が実際にどれだけの期間にわたり、市場に受け入れられているのかを考えながら、仕入れを行う事の重要性を改めて認識しました。
 昨今はロングセラーとなる商品が少なくなっています。そういった中で、餌や針、仕掛け、糸など比較的ライフサイクルが長い商品は大切にしないといけないと改めて感じました。取り扱っている商品が多いからこそ、一つひとつの商品を見つめ直し、それらに対して、我々がどういった行動を取っていくのかが重要になってきます。

 

 また、最近は異常気象が話題にならない年がありません。今年の夏も猛暑が続き、各地で熱中症アラートが頻繁に出されていました。その影響で、夏場の釣り人の動きが悪くなっていますし、夏の風物詩だった夜釣りを楽しまれるお客様も少なくなっています。
 夜釣りに関係して、時間帯別の来店客数を調べてみると、仕事が終わってから来店されるお客様が減少しています。釣具をネット販売で購入されることも増えているのでしょうが、おそらく慎重に釣行の計画を立てられ、無駄な購買活動をしないお客様が増えたのではないかと分析しています。「時間があるから釣具店に寄ってみよう」というお客様は減少しています。もちろん、可処分所得の減少やコロナ禍を経て生活様式が変わり、まっすぐに家に帰られる人が増えた事などもあります。
こういった複合的な要因で、お客様が店舗に来店される場合は、明確な目的を持って欲しいものだけを買われるというスタイルに変化しており、コロナ禍以前とは大きく環境が変わったと認識しています。

 

 一方、昨年良かった点としては、202211月に長崎女神店でオープンした、釣具業界初となる完全無人店舗「いつでも餌蔵」が、お蔭様で5店舗まで拡大した事です。今のところ、事故や大きなトラブルもなく、利用者もかなり増加しています。円滑に営業が出来ているのは、「いつでも餌蔵」を利用して頂く際に、会員登録に加え、顔認証を必要としており、高いセキュリティが担保されている事も、理由の1つだと思います。
 「いつでも餌蔵」の運営を行っていて興味深かった事は、釣果と来店客数の相関関係が高い事です。つまり、魚が釣れてさえいれば、お客様は深夜にもかかわらず積極的に動かれている事がわかった反面、魚が釣れていなければお客様は来られません。雨や風なども、思った以上に大きく影響しています。晴れでも風が強ければお客様がご来店されないこともよくありました。1号店である長崎女神店がオープンしてから、1年間が経過しました。幸いここまで問題なく運営が出来ていますが、セキュリティ面の心配は尽きませんし、決して油断もできません。拡大を急ぐのではなく、テクノロジーを更に磨きながら、検証を続けていきたいと考えています。

 

 また、昨年は多くのメーカー様と協力し、当社のアプリを活用した各種のダービーを行い、大きな反響がありました。これにより、多くのお客様を釣りにいざない、協力メーカーの商品の拡販にも繋がり、とても良いコンテンツが提供できたと思っています。今後も企画の内容やアプリの機能を更に充実させていきたいと考えています。

【2024年に向けて】

 2024年は環境が大きく変わった昨年を教訓とし、変化した環境に合わせ、次世代の営業活動を見据えて体制を見直し、整えていく1年にしていきます。

今は本当に厳しい時代が来ていると感じています。この厳しい時代を乗り越えていくための体制、すなわち、「新時代を生き抜いていく体制」をどう整えていくかが求められています。今から20年前の2004年当時は、それまでの店舗と比べて大型化が進み、営業時間も長くなっていきました。大量に商品を仕入れ、大幅にディスカウントし、お客様に商品を長い時間、安く提供する事が主流でしたが、今後はそれが出来なくなる時代です。何故なら競合他社も増え、業界内外を含めたネット通販もあり、その上で様々なコストが上昇し続けるからです。
 2000年から10年間ほどは金利や家賃、手数料などは交渉次第で安くなり、販管費は抑える事が出来ました。しかし、2015年頃から人手不足となり、各種経費や運賃も上昇傾向となりました。それがコロナ禍で一気に加速し、現在に至ります。特に地方都市では人口減少も進んでおり、昔とは釣りのビジネスを取り巻く環境が全く異なっているのです。これから10年後、20年後の変化した環境を見据えたビジネスモデルを構築してくことが必要だと考えています。
 ただし、我々は接客業ですからお客様との接点に磨きをかけていく事はかわりません。お客様を釣り場にいざない、釣りの楽しさを盛り上げていく取り組みは、引き続きしっかりと行っていきます。その上で、業務の省力化や効率化も推し進めていきます。

 また、今年は魚が釣れにくくなってきた事もありますが、ルアーばかりでなく、エサ釣りも含めた釣りの楽しさを、多くの釣り人にお伝えしていきたいと思っています。

 社内においては、これから先、誰もが管理職を目指す人ばかりではないと思います。当社でも釣りマイスターの制度がありますが、それとは別に商品知識に長けている、あるいはアフターサービスの技術が優れている、といったスタッフが活躍できる体制作りも整えてきたいと思います。

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<過去の社長インタビュー

2023年(昨年の振り返り・環境の変化・2023年の課題)

2022年(昨年の変化・業界の課題)

2021年(新型コロナウイルス・釣りと当社の取り組み・2021年に向かって・デジタル化・初心者をリピーターにするためには)

2020年(2019年について・釣り人を増やす取り組み・2020年の課題)

2019年(平成と今年・消費税増・2019年の取り組み)

2018年(昨年特に感じた事・働き方改革・ネット販売・2018年の取り組み)