TOP INTERVIEW 2018

『釣具新聞 第2911号』より
 ※記事のご提供:名光通信社様

重点施策『コモディティ化脱却を進め、ブランド力高める』

昨年特に感じられた事

 まず、昨年の業績ですが、お陰様で良い結果となりました。ゴールデンウィーク、シルバーウィークといった大型連休で大幅に伸び2桁以上の上昇となりました。1年を通じても安定しており、10月こそ台風の影響で若干トーンダウンしましたが、それ以降も順調な推移となりました。社員が本当によく頑張ってくれている事に加え、今まで人材、店舗、物流への投資を継続して行ってきた事、天候が良かった事も業績が伸びた大きな要因だと思います。
 さて、昨年特に感じた事ですが、釣りが確実にレジャーとして地域に根差している事に気付かされました。特に地方において統計上では人口減少、少子高齢化、若者の流出による過疎化などが顕著な地方でも、そういったデータからでは分からない、釣りの大きなマーケットや潜在需要がある事が分かったのです。
 それは、昨年当社がある地方の店舗で移転建て替えを行った時の事です。建て替え後の店舗は我々の基準で、最新の設計と設備でお店づくりを行いました。オープン直後から、我々も驚くほどの記録的な売上げとなりました。大きな商圏ではない立地の店舗にも関わらず、人口が遥かに多い地域の店舗の売上げを越えたのです。
 地方は都会に比べて釣りの参加率が高く、かつ釣りに熱心な方が多いと実感しました。
 新しい店舗には週末になるとファミリーの方が大勢来店されます。子供や若い釣り人の姿も目立ちます。店舗の会員分析を行うと、40歳代が最も多く、次に30歳代、その次に20歳代となります。一般的に釣りはシニアの方が多いといったイメージがあるのですが、実際はそうではありません。
 昨年秋に行われた「ファミリーフィッシングinアクアシアン」でも、毎年定員を遥かに超える応募があります。各地域で行われている釣りのイベントも大人気ですし、ファミリー層や若い方の釣りの潜在需要は非常に高いと思います。
 こういった潜在需要は、特にシーズン中に晴天が続くと高まります。その高まった潜在需要を現実の需要となるよう、どうマッチングさせるかは今後の業界の大きな課題だと思います。我々の役割としては、良い店舗を作り「釣りをしてみたい」と思っておられる方を確実に釣りの世界に誘(いざな)う事だと思います。これはリアル店舗の明確な役割だと考えています。
 また、地方は都会に比べて娯楽や商業施設等が少ないといった事もあるのかもしれませんが、ダイレクトに自分が楽しいと思う事にお金を使われる傾向があるように感じます。実際に高額の釣具もよく売れています。
 こういった事から考えると日本の将来の釣具市場を悲観する事は全くありません。若い方も多く、潜在需要も高い釣りはむしろ大きな可能性のあるマーケットだと我々は捉えています。

働き方改革について

 人手不足がニュースとなっていますが、当社は採用の面では恵まれていると思います。新卒で当社を受けに来られる方の多くは「ポイントで感じの良い接客を受けたから」、「ポイントのスタッフが楽しそうに働いていて、お店の雰囲気が好きだから」等、もともと当社の店舗に好印象を持って頂いており、「ポイントで働きたい」と思われて当社を受けに来られる方が多いのです。
 来年も50名程の新入社員が入ってきますが、女性社員が多いのも特徴です。女性も、子供の頃から両親と一緒に店舗に来られ、それがキッカケで当社への入社を希望される方が多いのです。当社に入社を希望される女性も多く、有難く思っています。
 ただし、特にここ数年、我々も働き方改革には積極的に取り組んできました。店舗は1年365日営業していますし、正月もお盆も休みではありません。仕事も立ち仕事です。採用は出来ていますが、離職率は残念ながら高い傾向にあります。ですから、若手や幹部社員を含めて待遇改善を随時行っていますし、休日の取得や公平な評価制度等の仕組み作りなど、働く環境については今も改善を続けているところです。せっかくポイントと釣りが好きで当社に入社してもらっているのですから、当社で働き続けて頂き、幸せになって欲しいと心から願っています。
 もう1つは、特に昨年から本格的に取り組んでいるのが、職場の雰囲気の改善です。働き方改革に加え、働く雰囲気の改善も行っています。社員にとっては、待遇改善等も大事なのですが、やはり働く現場の雰囲気が良くなければ、離職率は下げられません。現場の雰囲気を更に良くして、現場から様々な声が上がりやすい組織作りを行っています。また、その上がってきた声にきちんと対応できる会社を目指します。
 話は変りますが、当社のスタッフは本当によく釣りに行きます。これは自慢出来る事だと思います。会社としても一千万の予算を設けて、社員が釣りに行く事を奨励しています。社員も自分達で企画して、一緒に様々な釣りに行きます。女性スタッフの参加も多くなっています。社員同士が一緒に釣りに行く事によって、コミュニケーションが上手くとれ、結果的に職場の雰囲気も更に良くなり、明るい店づくりに繋がっているケースも多くなっています。

ネット販売について

 お蔭様で昨年の当社のネット販売業績も堅調に伸ばす事ができました。
昨年の大型連休は晴天が続きましたから、リアル、ネット問わず、恐らく全国の釣具店さんでも商品がよく動いたと思います。しかし、連休中にメーカーさんは休みですから出荷は出来ません。そのため我々の周辺の釣具店さんでは、商品の欠品が目立ったと思われます。
しかし、我々は自社物流で毎日出荷しています。そのため商品がよく動く期間中の欠品を最小限に抑える事ができた事も、昨年の業績が好調だった大きな要因だと考えています。
 今、我々が明確に感じているのは、台風や大雨になればどの釣具店さんも売れないということです。しかし、昨年の大型連休中のように、晴れた時、つまり売れる時に欠かさず商品の供給が出来れば、大きな差が生じます。つまり、外部環境が良くなった時に、それを加速させるのが物流の力なのです。これはリアル店舗でも通販でも全く同じ事が言えます。きちんと商品を調達し、ストックし、お客様にお届けする。この仕組み作りと強化を、AIも駆使しながら高め続けていく。これが、今後の我々の信じて進む道です。
 我々は昨年、様々な物流センターを訪れ、物流の在り方について勉強をし続けてきました。今はメーカーさんも在庫を持たない時代です。だからこそ我々はその商品を手配し、きちんとストックしておく必要があるのです。
 また、システムに更に磨きをかけ、販売機会ロスを最小限にしながら、在庫ロスも減少させていきます。目利きの仕入れも必要ですし、AI等を活用して自動化を進め、商品をデリバリーする力を一層高めていきます。加えて売場の効率化の為、売れ行き不良商品などは、商品導入後1年以内に自動的に対応し、死蔵品の撲滅に務めて参ります。今後もソフト面、ハード面の両方を高めていくため、積極的に投資を続けていきます。


2018年の取り組み

 今年はこれまで目指してきたコモディティ化からの脱却を更に進め、タカミヤのブランド力を高めていきます。重点施策としては以下の3つです。 
1. 商品を手配し、ストックし、売場へ、お客様へしっかりお届けするためのロジスティック改革に着手する。
2. 釣りファンのコミュニティをスタートさせる。
3. 働き方改革に加え、職場の雰囲気の改善を行う。人が育つ環境作りに着手し、社員の幸福度を高める。
この中で、2つ目のコミュニティの話ですが、今年、いよいよ当社はファンコミュニティをスタートさせます。釣りの楽しさを伝えながら、ポイントの会員様を更に増やしていきます。この事業はコモディティ化、同質競争からの脱却のための大きな力になると信じています。
 当社は、今後もリアル店舗ではモチベーションの高いスタッフがしっかりと釣り人を釣りに誘い、接客力を更に高め、タカミヤのブランド力を高めていきます。同時に物流力を高め、リアル店舗にせよ、通販にせよ、商品をしっかり調達し、スピーディにお客様にお届けする仕組みを更に磨いていきます。